線条体は大脳基底核の入力部位であるが、その局所回路は解明されていない。本論文は、線条体の8割を占める投射神経細胞において、その軸索側枝同士のシナプス結合の強さを、形態学的に検証したものである。免疫組織化学は「シナプス部位は裏打ちタンパクが多いため、抗体の浸透性が低い」という手法上の弱点があるが、私が英国留学中に開発段階から関わった凍結置換によるpost-embedding免疫電験法は、ナノメートルの厚さの切片上で免疫染色をおこなうことで、この弱点を克服できる。この手法を用いて、投射神経の側枝同士のシナプスと、内在性神経細胞との間のシナプス部位とで、GABA含有量、GABA受容体の量を比較した。この結果、線条体内では投射神経細胞同士のシナプス結合が弱く、局所回路における内在性神経の役割が大きいことが形態学的に証明された。
本研究に関する発表論文
- Fujiyama F, Fritschy JM, Stephenson FA, Bolam JP.
Synaptic localization of GABA(A) receptor subunits in the striatum of the rat.
The Journal of Comparative Neurology 416 (2), 158-72, 2000.