線条体のパッチ(ストリオソーム)・マトリックス構造は、遺伝子およびタンパク質の発現の差異で識別しうる構造であるため、定位脳手術によって順行性トレーサーを注入する従来の方法では、一方の構造のみを標識することが困難であった。本論文では、膜移行性シグナルを搭載した遺伝子改変ウイルストレーサーを単一の神経細胞(ニューロン)に感染させ、それがどちらの構造に存在しているのかを確認したうえで、その投射様式を隅々まで可視化し、解析した。この結果、パッチ領域にも間接路ニューロンが存在することを初めて発見した。さらに、線条体の直接路ニューロンの側枝が、間接路の中継核である淡蒼球外節にも投射することを明らかにし、直接路と間接路が独立ではない可能性を示唆した。この直接路ニューロンの側枝が、どのタイプの淡蒼球外節ニューロンにシナプスするのかを解明したのが、2017年の論文(Mizutani et al., 2017)である。
本研究に関する発表論文
- Fujiyama F, Sohn J, Nakano T, Furuta T, Nakamura KC, Matsuda W, Kaneko T.
Exclusive and common targets of neostriatofugal projections of rat striosome neurons: A single neuron-tracing study using a viral vector.
European Journal of Neuroscience 33, 668-677, 2011.