線条体の投射ニューロンは神経伝達物質と投射先の違いにより2つに分類されていて, それぞれ異なる経路を介して出力部である淡蒼球内節と黒質網様部に情報を伝達していることが知られています。 一つは GABA とサブスタンスP を含むニューロンが出力部に直接投射する直接路で, もう一つは GABA とエンケファリンを含むニューロンが, 淡蒼球外節と視床下核を経由して出力部に伝達する間接路です。このように、淡蒼球外節は間接路の中継核と考えられているのですが、淡蒼球外節に順行性のトレーサーを注入すると、線条体にも神経終末が見られることから、淡蒼球外節には視床下核や淡蒼球内節、黒質網様部に(つまり下降性に)情報を中継する以外にも線条体に情報を戻す役割があるのではないかと考えられていました。本研究は、膜移行性シグナルをつけたウイルスベクタを用い、健常ラットの淡蒼球外節には視床下核や淡蒼球内節、黒質網様部に投射すPrototypic Neuronの他に、Magillらのグループが最初にドーパミン欠乏状態のマウスで見つけた淡蒼球外節-線条体投射ニューロン(Arkypallidal Neuron)があることを単一ニューロンレベルで示したものです。つまり大脳基底核には、従来の直接路・間接路のような下降性の投射系のみならず、淡蒼球外節外から線条体に投射する上行性の投射系が存在することが明らかになりました。
本研究に関する発表論文
- Fujiyama F, Nakano T, Matsuda W, Furuta T, Udagawa J, Kaneko T Brain Structure and Function, 2016 DOI: 10.1007/s00429-015-1152-2